日本人介護士がドイツシニアの生活を言語、習慣、文化の違いに戸惑いながらも、彼等のクオリティ・オブ・ライフを如何に維持、向上出来るか考え、働いている話です。ドイツにおいて、日本人がドイツで楽しく、安心してシニア生活を送れるかも考察しています。
ある日のつぶやき 1
介護現場には色々な日常がある。訪問介護クライアントの日常。介護施設居住者の日常。もちろん、そこで働いている人たちの日常。
私の知っている様々な日常をつぶやくように書いてみたいと思う。
H氏の朝は、ダージリン紅茶で始まる。決まったレシピで丁寧に入れられる。それは正しく「茶事」であった。朝食も決まっていて、ミューズリーとコンデンスミルク。簡素だが、彼にとっては最適の朝食だ。お茶ができあがるまでの時間は血圧測定。朝のルーティン。
さて、この朝食を含むルーティンを別世帯で暮らす家族が知っているかどうかは疑問だ。
往々にして別世帯家族は生活の細かい決まりごとを知らない場合が多い。
彼の場合、朝のルーティンに一役買っていたシリアルボールを孫娘が壊した時の彼の怒りと落胆は、理解されなかった。
家族にとっては、1つの陶器が割れただけでいくらでも代わりになる入れ物は食器棚にある。なぜそこまで怒る?
ところが彼にとっては、明日のルーティンが崩れることが問題なのだ。
家族仲が良いことと、お互いの生活様式を理解しているかどうかは、一致しないことがある。
介護は、被介護者の生活を如何に維持するかが大前提にあるので、事前に生活様式を知っておく必要がある。
私の職場である介護施設でも新入居者には情報収集のために生活全般についてのアンケートを書いてもらう。入居者本人がかけない場合、家族が代筆する。その時、迷いながら書く人が意外と多い。私も晩年の両親がコーヒーに砂糖とミルクを入れていたかはわからない。
ある痴呆症専門家が言った。「子供たちは私がトルテリーニが好きだと思ってる。でも、私がよくトルテリーニを作ったのは子供たちが好きだったからだ。私が痴呆になったら、子どもたちは私がトルテリーニが好物だと確実に言うだろう。」
食の情報アップデートは、いろいろな方向から頑張る必要がありそうだ。
現在の自分の好みを知ってくれる人を作るというのも、積極的に行なう必要がありそうだ。